夕方、仕事を終えて帰宅すると長男がいなかった。遊びに行ったまま、まだ帰っていないのだろうか、もう、6時は過ぎている。妻に長男の所在を尋ねると「あっくんの家で合宿するんだって」という返事だった。あっくんは、たびたびこのブログにも登場するぼくの甥で、小学3年生。長男より一つ年上で近所にすんでいる。
妻に詳しい事情を聞いてみた。長男は、朝から宿題を鞄に詰め込んで、あっくんの家に行った。宿題もちゃんとする気だったようだが、もちろん、遊ぶ気も満々だったようだ。昼食も食べさせもらい、あっくんの家での一日を存分に楽しませてもらった夕方、遊び疲れて、とても眠たそうな様子だったらしい。そして、それを見た義姉が「夏休みだし、今日は泊まったら」と言ってくれたという。そして、本人からは許可を求める内容の、義姉からは事情を詳しく説明する内容の電話があって、「それじゃあ」と言うことで泊まることになったらしい。
で、長男からの電話「あっくんちで合宿してもいい?」だったそうだ。「合宿」なんて言葉をどこで覚えたのかは知らないけれど、自宅以外のところに泊まって集中的に何かに取り組むことだと言うことのイメージはあったみたい。「何の合宿?」と妻が尋ねると、「ゲームとか・・・。あと、宿題もちゃんとするから」と答えたのだそうだ。wiiで何かの対戦ゲームをしたいらしい。正直に全部話してしまうところが、まだまだ小学2年生らしくてかわいい気がする。
その後妻が着替えを届けて、長男は1泊の合宿に入った。
そんなわけで、家には、ぼくと妻、次男と三男が残った。長男のいない夕食はやはり何かが物足りない気がする。次男も三男もいるので静かというわけではないのだけれど、長男の存在感、ならぬ、不在感を感じる。
次男に「お兄ちゃんがいないから、今日はちょっと寂しいね。」と言ったが「別に。つっくん(三男のこと)がいるし」と言い、「喧嘩しなくいすむからいいよ。」と言葉を続けた。平静に振る舞っているつもりなのだろうが、少しつまらなさそうな響きを感じる。言葉の意味ほどに長男の不在を歓迎しているわけではないことがわかる。それでも、寝るときには、いつも長男が寝ている場所を次男が陣取り、うれしそうな顔で「ぼくも一回ここで寝てみたかったんだ」と言った。「お兄ちゃんに寝る場所変わってって言えばいいじゃん」とぼくは言ったが、やはり次男という立場上?本人を前にすると遠慮も出るのだろう。「無理」とだけ、短く言った。
翌朝、朝御飯を食べていると「お兄ちゃんは?」と言って三男が起きてきた。「夕べからいないよ。合宿だって」と妻がいう。2歳の三男にとっても長男の不在は気になるらしい。小さければ小さいなりに兄弟の絆があるのだろう。
長男が帰ってきたのは、その日の夕方だった。ぼくが仕事から帰ると、子どもたち3人が自転車に乗って遊んでいた。
ぼくが長男に「合宿、どうだった?」と聞くと、満足そうな顔をして「まあね」と答えた。充実していたのだろう。
この日は、みんなで先に入浴をすませてから夕食となった。
長男を除く4人が食卓に着いた。長男は「合宿」でした宿題を先に整理しておくとかなんとか言って、「すぐに下りてくるから」と鞄を持って2階の部屋にあがったのだ。
さて、食卓。テーブルには、ジャガイモとウインナーがカレーで炒めた皿があったのだけれど、それを一口食べた次男が、「おいしい、お母さん、これどうやって作ったの」と聞き、一通りの説明を受けた後「お兄ちゃんに教えてあげる。呼んでくるね」と言って箸を置き、席を立とうとした。ぼくは、それを制止した。もうすぐ来るから、落ち着いて食べなさいと言った。そしてその後「おいしいものを食べるのに、わざわざお兄ちゃんを呼びに行ってあげるなんて、優しいね。」と次男に言った。次男、ぼくのその言葉に、「ううん、優しいのは、お兄ちゃんの方だよ。だって今日夕方自転車で競争したとき、手加減して、ぼくが勝つようにしてくれたんだよ。」とまじめな顔で言った。
ほどなくして、長男がやってきた。次男がさっき妻から聞いた説明を長男にする。長男、早速カレー炒めを一箸食べて、おいしいと言って次男と語り合った。
一晩いなかっただけの長男。しかし、そのいなかった時間を通して、なんだか、二人ともお互いの存在をより一層深く心に刻んだような気がした。今のまま、仲良く大きくなってくれればいいとぼくは思うのだった。
お知らせ
と言うほどでもないのですけれど・・・。忙しくしてました。明日から出張なのです。次回は、10日か11日頃かな。またお付き合いくださいね。